蒼夏の螺旋 “浅夏清和”

 



寒の戻りに花冷えに。
冬から春へと着実に移り変わる頃合いでもね、
時々は思わぬ後戻りをしてくれる、お茶目なお天気。
こないだの数日ほどなんて、
どうかすると半袖になって丁度いいくらい暑かったのに、
それが嘘だったみたいに、昨日辺りはまたまた春先まで後戻りして。
今朝も何だか肌寒いなぁ。
今日はゾロがお休みなんで、
も少し寝かしといてあげたくて。
こっそり起きてベッドから抜け出して。
お台所でキヌサヤ入りの炒り玉子とおみそ汁の
下ごしらえを済ませてからネ?
1階のメールボックスまで、
こっそり新聞を取りに行って来たは良いんだけれど。
しまった、下はジャージだったけど、
上は寝間着代わりのタンクトップ一枚だったから、
剥き出しになってた二の腕の肌が“さぁー…っ”て、
そりゃあもう判りやすく泡立って来て。

“こ〜れは大変、風邪引いちゃうよう。”

あわあわと慌ててお部屋へ帰った。
がちゃ・きぃ、ごそごそ、がっちゃん、ぱたぱたた…。
オートロックだからと、振り返らないまんま、
スリッパを突っかけるのももどかしく、廊下を上がって一番奥の寝室まで。
「…? るふぃ?」
そぉっと出てったくせに、そりゃあにぎやかに戻って来ちゃったから、
「………あ、ごめん。」
あちゃちゃ、起こした?
声がなんか、まだ片言っぽいよ?
せっかく気持ちよく寝てたんだろに ごめんネごめんネ。
心の中では そう言ってたよ? ちゃんと“ゴメン”て。
ベッドの端っこから乗り上がって
軽いのに替えたばかりの羽毛布団の中へ、
お風呂みたいに脚から突っ込んで、
あっと言う間に もぞもぞもぞって、
元いたところ、ゾロの懐ろに、そりゃあ素早く逆戻り。
お布団の感触のほかに、
ふんわり温ったかい空気が肌をくるんで、
背中や二の腕、ざわざわってしてたのがあっさり引っ込む。
「外、寒かったのか?」
頭の上、髪の中に口元をくっつけたままでゾロが訊くから、
ん〜んって かぶりを振って、
頬っぺをごそこそって擦り込むようにもっとくっつける。
「寒いってほどじゃないよ?」
「そか?」
じゃあなんで そんなぎゅうぎゅうくっついて来るかな。
ゾロの此処って気持ちいいからvv
昨夜はTシャツのパジャマを着て寝てた。
一回脱いで、また着てた
(え?//////そのお胸へと、
頬っぺをぐりぐり。
そしたら長い腕が伸びて来て、
下は首の下のところをくぐらせて、
上の側は肩から背中を余裕でクルリって、
力強い雄々しい腕がくるんでくれる。
楯のような頼もしい胸板も、シャツ越しだと不思議とふんわり柔らかで。
そぉっとそぉっとって力を抜いてくれてるからだろか?
この胸もこの腕も、
この温みもこの匂いも。
ときどき耳元で何か囁く、響きのいい低い声も、
ねぇ、全部全部、オレのもんだよな?
笑うなよ、なあなあ、俺んだろ?

世界に背中向けて、世界から隔絶されて二人きり。
幸せな空間に取り込まれて夢心地…。





  〜Fine〜  05.5.23.


  *いや〜、まだ明け方は時々寒いですよねと。

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